Sunday, September 24, 2017

被災地タクシー運転手の幽霊体験

 今回の震災以後、岩手県や宮城県そして福島県でも、タクシーの運転手さんが同じような幽霊体験をしています。
道で手を挙げる人がいるので停車して載せ、行く先を聞いて走り出します。しばらくその目的地に向かって走るうちに運転手は気づきます。
「お客さん、あそこは今、瓦礫も片付いてませんし、行っても何もありませんよ」
場合によっては載せた直後、すぐに運転手が気づくこともあったようですが、「とにかく行ってくれ」というのが客の返事。仕方なく車を走らせ、目的地付近に着いて「このへんでいいですか」などと訊きつつ振り向くと、後部座席に人影がない、というのです。
 なかには後部座席が濡れていたとか、多少のバリエーションがありますが、同じような体験を相当多くのタクシー運転手さんがしているようです。


玄侑宗久『やがて死ぬけしき』


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 石巻ではタクシーに幽霊を乗せた運転手の体験談が多く聞かれ、その話を収集した大学院生の論文が話題になったことがある。(p.175)

畑中章宏『21世紀の民俗学』