Sunday, March 28, 2021

「今だけカネだけ自分だけ」集団ストーカーの孤独死

 私がこれまで看取ってきた中で特に顕著だったのが、都会の大会社などに勤め、いつもビルの中でデスクワークをしているビジネスマンたちです。彼らは日々、自然を相手に仕事をすることがありません。土や泥にまみれて働くということがありません。彼らは、とかく「死んだらすべてが終わって、自分の存在すらなくなってしまう」と思い込み、生に強く執着する人が少なくありませんでした。

そういう人たちは、科学的に証明されることこそが真実であり、科学の知識で解決できないものは敬遠します。死の恐怖をやわらげてくれる可能性があるはずの「お迎え」現象も、「そんなもの信じられるか」という否定的な感じでした。

こうなると、最期が近づき、「お迎え」があったとしても、それを受け取れずに終わってしまいます。そして、先祖も誰もいない場所で、ひとりぼっちで孤独と向き合い、死の恐怖と闘いながら死んでいくのです。(p.167)


奥野滋子『「お迎え」されて人は逝く 終末期医療と看取りのいま』