Saturday, February 26, 2011

斉の広場の無数の死者が 「え? そんなバカな!」

 < 死者の群れ >
 
  断層となって深い亀裂が、見わたすかぎり、
どこまでもつづいている。対岸はほとんど見えない。
  この斉の広場に、無数の人びと(死者)が
集まっている。死者たちはこの断層を飛び越え
なければならぬのである。断層の下は急流に
なっていて、そのまま地獄の底につながっている。
  一代で巨財を積んだ大富豪が、晩年、
一大発心をして、社会事業に多額の寄付をし、
また、座禅にうちこみ、師家より、空の悟りを得た
との認可を得た。地獄も極楽も心の影とさとりきって
いたのに、なぜ、こんなところへ来てしまったのか
と大不満であった・・・断崖から飛び出したが、
たちまち転落していった。
  晩年のかれは、たしかにいっさいの欲をはなれ、
座禅三昧に明け暮れ、なにがしかの悟りは得たが、
若い時から金のために多くの人を泣かせ、
かぞえきれぬほどの怨恨の念を集めていたことを
忘れていたのである。
  (p.p. 332-343)
   『君は誰の輪廻転生(うまれかわり)か』 桐山靖雄

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42 n 2010/10/18() 12:16:44
鬼和尚さまは、
「悪いことをしていれば万一悟りに成功しても
 過去の悪い業まで消えるわけではなく、
 相変わらず悪の報いは受ける」
 とよく説かれておられますが、このエピソードも

同様のことを教えようとしていると解釈して
よいのでしょうか

52 鬼和尚 GBl7rog7bM 2010/10/18() 19:54
 そうかもしれん。
 その空の悟りと言うのもあり得んのう。
 悪行の報いでニセモノの師家に騙されていたのじゃろう。
 法を択ぶというのもまた大事な修行なのじゃ。
                 (伝説の鬼和尚スレより)
 【本日のオマケ】
もうひとつ「そんなバカな」をどうぞ!

旅法師「しかし、死んだ人間まで嘘を言うとは考えられない」

下人「なぜだい?坊さん」

旅法師「人間がそんなに罪深いものだと考えたくない」

下人「それはお前さんの勝手だがいったい正しい人間なんて
   いるのかい。みんな自分でそう思っているだけじゃねえのか。」

旅法師「恐ろしいことを」

下人「人間というヤツは自分に都合の悪いことは忘れちまう。
   都合のいい嘘を本当だと思ってやがるんだよ。その方が楽だからな」
 
旅法師そんなバカな

[英語字幕]
   Commoner: But is there anyone who's really good? Maybe goodness is just make-believe.

Priest: What a frightening...

Commoner: Man just wants to forget the bad stuff, and believe in the made-up good stuff. It's easier that way.

Priest: Ridiculous.

黒澤明監督『羅生門』(1950年)